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営業秘密侵害事件の行為保全は3つの利益衡量を図るべき

裁判要旨

営業秘密侵害事件に係る行為保全(仮処分に相当)を認めるか否かは、申立人の勝訴の可能性と回復困難な損害の有無との衡量、権利者の利益と侵害被疑者の利益との衡量、私的利益と公共の利益との衡量という3つの利益衡量を図らなければならない。

概要

2015年11月17日、米国イーライリリー社は上海知的財産権法院(裁判所)に訴えを提起して、離職者Wが無断で会社の28の営業秘密を私物機器に保存していると主張するとともに、1.被告が侵害を直ちに止めること、すなわち、28の営業秘密文書を永久に削除するとともに、開示、使用又は他人の使用の承諾をしてはならないこと、2.原告の経済的損失3000万元(約4億8000万円)を賠償することを請求した。同日、米国イーライリリー社は上海知的財産権法院に行為保全を申し立てて、申立人の28の営業秘密文書について被申立人Wが開示、使用又は他人の使用の承諾をしてはならない旨を命ずる裁定を法院に請求した。

申立人は次のように述べた。Wは米国イーライリリー社の元従業員であり、薬品の研究開発業務に従事していた。2015年、Wは米国イーライリリー社の機密文書を私物の記憶装置に大量に保存した。申立人が本件で主張する28の文書は営業秘密である。Wと米国イーライリリー社とは秘密保持契約に署名しており、機密文書を私物の記憶装置に保存することは、営業秘密侵害行為に当たる。上記の文書は現在、常に外部漏洩されるリスクにさらされているので、申立人は、28の機密文書について開示、使用又は他人の使用の承諾をWに禁止させるように法院に請求するとともに、このために50万元(約790万円)の担保を提供した。

被申立人は次のように弁明した。被申立人は、係争の文書を私物の記憶装置に保存したこと、係争の28の文書は第10号文書に秘密性(非公知性)及び価値性がないことを除き営業秘密に当たることを認めている。被申立人が会社の所有ではない記憶装置を用いていることは、会社の関係規定には合わないものの、侵害には当たらない。

裁判

上海知的財産権法院は次のように認定した。申立人は、本件で主張した営業秘密に秘密性、秘密保持性(秘密管理性)及び価値性があることについて、既に一応の証拠を提出しており、被申立人は、係争の文書が営業秘密に属することについて異議を持っておらず、係争の文書を私物の記憶装置に保存する行為があったことを認めている。上海知的財産権法院は、申立人の勝訴の可能性、判決の執行が困難な事情の有無、被申立人の利益及び公共の利益の保障等の要素を総合的に考えて、申立人が本件で主張する営業秘密について被申立人Wが開示、使用又は他人の使用の承諾をしてはならない旨を裁定した。

評価分析

1.営業秘密の行為保全の考慮要素

行為保全の申立ては、取り返しのつかない他の損失を権利者が受けないようにするために、被申立人が実施中又は実施可能な行為を直ちに抑制するか、又は救済措置を取ることを主な目的とする。行為保全の被申立人への影響は財産保全よりもはるかに大きく、特に、営業秘密事件では被告が労働者個人であることがよくあり、或る行為の差止めを被告に命じることは、労働者の生存及び発展に影響するおそれがあり、その上、営業秘密自体の性質が特殊であるので、営業秘密の行為保全を認めるか否かにおいては、制度の適時性及び敏速性を考えることも、行為保全の申立ての乱用を防止することも必要であり、また、具体的な判断においては、個々の状況に応じて様々な要素を総合的に考え、当事者間の利益及び公共の利益の衡量を図るべきである。

2.営業秘密の行為保全は利益衡量を考える必要がある

まず、申立人の勝訴の可能性と、回復困難な損害の有無との衡量である。申立人の勝訴の可能性は通常、行為保全を考える主な要素である。行為保全の申立てが被申立人に対して大きな影響をもたらし得ることを鑑みて、申立人の勝訴の可能性が低い場合に行為保全を認めると、双方の利益の均衡が失われることになり、権利者の行為保全の乱用を放任することになる。営業秘密にははっきりとした権利の外観がなく、申立人の主張する情報が営業秘密の構成要件を満たすか否かは、法院が実体的に審査する必要があるので、営業秘密侵害事件については行為保全を認めるべきでないという考えがある。確かに、勝訴の可能性に関して、実体的な審査をする前に営業秘密の成立の可否を判断するのは難しい。しかし、営業秘密は特殊な性質であり、すなわち、権利者の主張する営業秘密が一旦公衆に知られると、その情報が営業秘密に当たるか否かにかかわらず、商業的価値がなくなり、このため、権利者にとっては回復困難な損失となり、後に訴えが法院に支持されるようになったとしても、その執行が困難であるか、又は執行の意味がなくなる。したがって、営業秘密侵害事件の行為保全では、権利者が営業秘密の価値性、秘密性及び秘密保持性の点に関する一応の証拠を提出しており、その営業秘密が訴訟前に公開されていない場合には、もちろん他の要素も総合的に考慮する必要はあるが、やはりその行為保全申立てを認める必要がある。本件では、被申立人Wは第10号文書が営業秘密に当たるか否かについて異議を唱えているが、申立人は秘密保持契約、物理的に講じた秘密保持措置及び価値性等の一応の証拠を提供しており、利益衡量の点から、法院は、被申立人は当該文書を開示、使用又は他人の使用の承諾をしてはならないと認定しており、これは判決の最終的な執行の確保にとって重要な意義がある。

次に、権利者の利益と侵害被疑者の利益との衡量である。営業秘密侵害紛争では、原告と被告とが雇用関係にある割合が高い。離職者が再就職又は創業をすると、通常、元の雇用先の業務において知り得た知識、経験及び技能を活用することになり、これらの知識、経験及び技能と、元の雇用先の営業秘密とにはおそらく密接な関係がある。したがって、その行為保全は労働者の労働権に大きな影響を及ぼすおそれがあり、慎重に利益衡量を図らなければならない。労働権は公民の生存及び尊厳に関係するので、財産の権益である営業秘密よりも労働権の方が地位的に高いことは明らかであり、両者が抵触した場合、司法政策上、労働者に保護を与えるべきである。一方、労働権と営業秘密とは法定の権利又は利益として法律による保護を受けるべきである。長い目で見ると、労働者の福利の保障及び待遇の向上は経営者の競争力の向上を基礎としているので、営業秘密があまりに保護されなくなると、企業の競争力に影響し、制約を与えて、労働者全体の利益が根本的に損なわれてしまう。裁判の事例毎に、労働者の適法な権益を保護した上で、利益衡量の原則に則って、営業秘密を合理的に保護すべきである。本件では、係争の文書の使用の有無が通常の業務に影響を与えないことを被申立人が確認している。したがって、被申立人に対する行為保全措施が基本的に労働の権利を損なうことはない。また、申立人は本件について担保を提供しており、被申立人の利益に対しても一定の保障がなされている。

最後に、私的利益と公共の利益との衡量である。中国の立法では営業秘密の制限についてまだ明確に規定されていないが、営業秘密の保護は他の知的財産権と同様に私的利益と公共の利益との衡量を図る。本件の申立人が保護を主張する文書は薬品に属しており、公衆の健康と関係があるが、係争の情報は研究開発中の途中の成果であり、これらの文書の開示の有無と公衆の健康とは直接に関連しているわけではない。公衆の健康に関係する業界の情報を全て公共の利益の範疇に入れると、権利者の利益を不当に損ない、関連業界の投資及びイノベーションに打撃を与えることになりかねない。

事件番号:(2015)滬知民初字第758号

事例編集:上海知的財産権法院 範静波

2016-07-22

侵害商业秘密案件行为保全应把握三个利益平衡

裁判要旨

涉及侵害商业秘密案件的行为保全,是否准许应当把握三个利益平衡,即申请人的胜诉可能性与是否存在难以弥补损害之间的平衡、权利人利益与被控侵权人利益的平衡、私人利益和公共利益之间的平衡。

案情

2015年11月17日,美国礼来公司向上海知识产权法院提起诉讼,主张离职员工W未经许可将公司28个商业秘密转存至私人设备,请求法院判令:1.被告立即停止侵权,即永久删除28个商业秘密文件,并不得披露、使用或允许他人使用;2.赔偿原告经济损失人民币3000万元。同日,美国礼来公司向上海知识产权法院提起行为保全申请,请求法院裁定责令被申请人W不得披露、使用或允许他人使用申请人的28个商业秘密文件。

申请人称:W原系美国礼来公司的员工,从事药物研发工作。2015年,W将美国礼来公司大量机密文件转存至其私人存储设备,申请人在本案主张的28个文件为商业秘密。W与美国礼来公司签署了有关的保密协议,其将相关机密文件转存至其私人存储设备,已构成侵害商业秘密行为。上述文件目前处于随时可能被外泄的风险境地,故请求法院禁止W披露、使用或允许他人使用28个机密文件,并为此提供了50万元人民币的担保。

被申请人辩称:被申请人承认曾将涉案文件转存至私人存储设备,涉案的28个文件除了第10号文件不具有秘密性和价值性以外,其余文件均构成商业秘密。被申请人使用非公司来源的存储设备虽与公司有关规定不符,但并不构成侵权。

裁判

上海知识产权法院认为,申请人已经就其在本案中所主张的商业秘密具有秘密性、保密性和价值性提供了初步证据,被申请人对涉案文件属于商业秘密基本不持异议,并承认了其存在将涉案文件转存至私人存储设备的行为,综合考虑申请人的胜诉可能性、判决是否存在难以执行的情形、被申请人的利益和公共利益保障等因素,裁定禁止被申请人W不得披露、使用或允许他人使用申请人在本案中主张的商业秘密。

评析

1.商业秘密行为保全的考量因素

申请行为保全的主要目的是为了避免权利人遭受其他不可弥补的损失,有必要立即制止被申请人正在实施或可能实施的行为,或者采取一定补救措施。由于行为保全对被申请人所造成的影响远大于财产保全,尤其在商业秘密案件中,被告往往是劳动者个人,责令被告停止某项行为可能会影响劳动者的生存和发展,加之商业秘密本身性质具有特殊性,在是否准许商业秘密行为保全上,既要考虑制度的及时性和便捷性,又要防止行为保全申请被滥用,在具体的判断上,应当根据个案情况,综合考虑各种因素,平衡当事人之间的利益以及公共利益。

2.商业秘密行为保全需进行利益平衡的考量

首先,申请人的胜诉可能性与是否存在难以弥补损害之间的平衡。申请人的胜诉可能性通常是行为保全考量的首要因素,鉴于行为保全申请对被申请人可能造成较大影响,如果申请人胜诉可能性不高,准许行为保全可能会使双方利益失衡,并会纵容权利人滥用行为保全。有观点认为,商业秘密不具有清晰的权利外观,申请人所主张的信息能否满足商业秘密的构成要件需要法院进行实质审查,因此对于商业秘密侵权案件不应准许行为保全。笔者认为,从胜诉可能性的角度,在未经实体审查之前商业秘密能否成立确实很难判断,但商业秘密在性质上具有特殊性,即如果权利人所主张的商业秘密一旦被公众所知悉,则无论其主张的信息是否构成商业秘密,均不再具有商业价值,权利人因此面临着难以弥补的损失,即使将来的诉请被法院支持,亦难以执行或不具有执行的意义。因此,在商业秘密侵权案件的行为保全中,如果权利人提供了有关商业秘密价值性、秘密性和保密性方面的初步证据,且该商业秘密在诉讼前尚未被公开,仍有必要准许相应的行为保全申请,当然还需要结合其他因素综合考虑。本案中,被申请人W尽管对第10号文件是否构成商业秘密持有异议,但申请人提供了保密协议、采取物理保密措施以及价值性等方面的初步证据,从利益平衡的角度,法院认为责令被申请人不得披露、使用或者允许他人使用该文件,对于保证判决的最终执行仍具有重要意义。

其次,权利人利益与被控侵权人利益的平衡。在侵害商业秘密纠纷中,原、被告具有雇佣关系的案件占据了相当高的比例。离职员工再就业或创业后,通常对其在原单位工作中所获取的知识、经验和技能不可避免的需要运用,而这些知识、经验和技能与原单位的商业秘密之间可能会密切交织在一起。因此,有关的行为保全可能会对劳动者的劳动权产生重要的影响,必须审慎地进行利益平衡。显然,由于劳动权关系公民的生存和尊严,相较作为财产权益的商业秘密而言,其在权利位阶应当更高,在两者发生冲突时,司法政策上应当给予劳动者倾斜保护。另一方面,劳动权和商业秘密作为法定的权利或利益,均应得到法律的保护。从长远来看,劳动者福利保障与待遇提升的基础在于经营者竞争力的提升,如果过于弱化商业秘密的保护,将影响和制约企业的竞争力,在根本上损害整个劳动力群体的利益。在个案裁判中,应在保护劳动者合法权益的基础上,遵循利益衡量的比例原则,对商业秘密进行合理的保护。本案中,被申请人确认其是否使用涉案文件不影响其正常工作。因此,对被申请人采取行为保全措施,并不会损害其基本的劳动权利。并且,申请人为本案提供了相应的财产担保,对于被申请人的利益也有一定的保障。

再次,私人利益和公共利益之间的平衡。我国立法虽未对商业秘密的限制作出明确规定,但商业秘密的保护与其他类型的知识产权一样,是在私人利益和公共利益之间的平衡。本案申请人所主张保护的文件虽属于药品,与公众的健康有关,但涉案信息均为研发过程中的阶段性成果,是否披露这些文件与公众健康并无直接联系。如果将与公众健康有关行业的所有信息均纳入公共利益的范畴,将会不适当地损害权利人的利益,并将打击相关行业的投资和创新。

本案案号:(2015)沪知民初字第758号

案例编写人:上海知识产权法院 范静波

2016-07-22

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